大判例

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東京地方裁判所 昭和39年(ワ)8626号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔争点と判断〕判決は本件小切手は訴外米内俊尚が被告会社の代表取締役武内一彦の承諾をえないで振出されたものであると認定したが、原告の民法第一一〇条の表見代理の予備的主張を認め、その理由をつぎのとおり述べている。

「しかしながら、米内は少くとも被告会社代表者の個別的承認の下にする手形小切手振出の代理権限を有していたことが前記認定のとおりであるところ、……を綜合すれば、被告会社においては、その営業開始の当初から営業成績が不振で殆んど収益を挙げえず、殊に昭和三九年五月頃からは代表者である武内の提供する資金だけでは、資金繰りに窮迫を生じていたので、経理事務を担当する米内は同人と同様に取締役で、かつ、営業を担当していた訴外郷原満義と相談のうえ、武内の決済を経ないで他から金融を受けて被告会社の資金操作をするようなこともあつたが、郷原の斡旋で社外から金融を受けていた金三〇万円の返済期限が、たまたま武内が香港に出張不在中の同三九年七月一〇日頃に到来したので、米内、郷原の両名はその返済のために郷原の知り合いである原告会社代表者細永宏に対し、被告会社の資金として金三〇万円の借入を懇請し、さきに米内が被告会社のために原告会社から借入れていた金三万二、〇〇〇円の内二万二、〇〇〇円と合せ、合計三二万二、〇〇〇円の支払のため、米内がその保管する被告会社代表者の記名印および代表者の職印によつて作成した右金額の本件甲第一号証の小切手一通を被告会社の社員訴外中山由紀夫を介して原告会社代表者細永に交付すると引換えに、同人から現金三〇万円の交付を受け、これを融資先に対する返済金にあてたこと、および細永としては米内において右小切手の振出につき正当な代理権限のあるものと信じていたものであることが認定できる。」

「そして、本件小切手の振出人欄に押捺されている会社代表者武内一彦名義の記名印およびその名下の代表者の職印が被告会社の印章によるものであること、右小切手の作成交付に当つた米内が被告会社の取締役で、かつ、経理事務の担当者であつたことその他前認定の右小切手授受の事情等を綜合して考察すれば、原告会社代表者細永が米内に小切手振出の正当代理権があるものと信ずるにつき正当な事由あるものと認めるのが相当である。」(藤野博雄)

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